ホーム3.RC構造物における時間依存性構造学3.1 水平材の長期たわみ及びひび割れ解析

3.1 水平材の長期たわみ及びひび割れ解析

解析1-1 ▶ 1方向スラブの長期たわみ解析 ◀

【概要】
 鉄筋コンクリート造の床スラブは、長期間のクリープによるたわみや乾燥収縮によるひび割れなどによって著しい剛性低下を生じ、長期たわみ障害を生じることが知られており、これまで床スラブの長期たわみに関する実験が多く行われている。
 本研究では、そのうちの小柳ら(元大林組技術研究所)が実施した1方向スラブを模擬した長期たわみ実験を、3次元有限要素法(解析プログラム「Soft OCU」による)によって時間依存性に対応できる非線形構造解析を実施した。ここで、曲げモーメントや乾燥収縮ひずみによるコンクリートのクリープひずみやひび割れひずみstep by step法(逐次積分法)で継続的に算定した。また、鉄筋とコンクリートの付着クリープによる付着剛性の低下についても逐次解析で実施した。
 この結果、たわみ量の大きさ、ひび割れ箇所およびひび割れ幅、ならびに鉄筋の応力度などについて、実験結果と解析値とは概ね同等な値となり、実験結果を推定できることが確認された。
【本解析の特徴】
 鉄筋コンクリート構造物の長期性状のうち,水平材のたわみやひび割れ性状を数値解析によって推測する研究はこれまでいくつかあり,PRCやRC梁あるいは床スラブのなどの長期性状を,ファイバーモデルやFEMなどで解析している。しかし,長期ひび割れ性状について評価しているものはあるが長期たわみ性状についての解析はほとんどない。
 そこで,本解析では,時間依存性を有する自己ひずみによって長期的に渡って徐々にひび割れ劣化する状況の変形性状を解析できる3次元構造解析用FEMソフトを適用し,床スラブの長期たわみとひび割れに関する実験結果に対する再現性を検証した。
【発表論文】
日本コンクリート工学会2020年度年次講演論文報告集
・有限要素法による床スラブの長期たわみ解析
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載荷後の長期ひび割れ図(2200日後)
ひび割れ幅の経時変化
ひび割れ幅
たわみ解析結果

解析1-2 ▶ PRC(プレストレスト鉄筋コンクリート)構造の中長期的ひび割れ解析 ◀

【概要】
 プレストレストコンクリート構造は、RC 構造の曲げ性能の適用範囲を広げるとともに、意匠的に自由度の高い平面計画を実現する有意義な構造方法である。しかし、プレストレスを導入したコンクリート構造物の設計では、ひび割れを生じさせないことを基本原則としていることが多いため、ひび割れ以降における適用性、あるいはひび割れ進展時における適用性についてはほとんど設計上考慮されていない。したがって、ひび割れ発生以降のシミュレーションの研究例はほとんどないのが現状である。
 一方、プレストレストコンクリート構造の合理性を活かしつつ、十分な耐久性を確保するためには、構造物の使用期間に渡ってひび割れ幅の経時変化を予測することが必要となる。ひび割れも考慮したプレストレストコンクリート構造物の挙動を評価するにあたっては、解析の自由度が高い有限要素法(FEM)の利用が有効と考えられる。

 本研究では、コンクリートの時間依存変形挙動として、クリープと乾燥収縮を考慮するとともに、コンクリートの硬化過程に伴う材料特性の変化を考慮し、さらに離散したひび割れの発生が評価可能な3 次元有限要素解析を用いることで、プレストレストコンクリート構造梁の時間依存挙動の解析結果を、実験結果と比較することによって本プログラムの再現性を評価することとした。本研究で対象とするプレストレスト構造は、鉄筋コンクリート構造にプレストレストを導入する構造( PRC構造)である。
 この結果、本解析方法によっても、PRC構造におけるひび割れ以降の挙動を概ね予測することが可能であることが分かった。

【発表論文】
プレストレストコンクリート梁の中長期的ひび割れ解析:PDFファイルを表示
モデル対象とした試験体
引張鉄筋応力の経時変化
コンクリートひび割れ図
引張鉄筋の応力図
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